不幸を比べる
職場に同い年のフランス人女性がいます。彼女は結婚歴もなく、子どももなく、現在彼氏もいない状態です。外見がとても綺麗で社交的、交友関係もすごく広い彼女ですが、気分の浮き沈みが激しいのです。
先週の金曜日に、突然彼女が
「いいわよね、Lavieは。可愛い息子がいるから。」
と言いだしました。もちろん、彼女は夫の死も知っています。そして彼女は続けてこういうのです。
「私は不幸だわ。結婚もしていない、子どももいない。唯一仕事があるのが救い。」
と。恐らく普通の神経の人だったら喧嘩になっていたかもしれない、これらのセリフ。
私は、最愛の配偶者との死別を30代半ばで経験しましたが、それでも「自分が世界一不幸だ」とは思ったことがありません。世界中には、私よりも辛い経験をしている人が山ほどいると思うのです。
夫だけでなく子どもも同時に失った人もいるでしょうし、家族親戚丸ごと殺された人だっているはず。とは言っても、自分よりも不幸な人と比べて優越感に浸るわけではありません。ただ、ヘコタレてはいられない!と自分自身を鼓舞しているというか・・・。
あなたは養わなければいけない小さな子がいるわけじゃないし、遊びたい時に遊びに行ける、稼いだお金は自分の好きに使えるんだから何が不幸よ。
と思いましたけど、同じ土俵に立つのはやめました。しかも、よく考えたら
死別してしまったけれど、心の底から愛し愛された経験があって、その人との子どもを今こうして育てられるんだから、私は彼女より幸せかな?
と思い直したのです。でも一言だけ、
「幸い息子がいるけどね・・・でもいなかったら、きっと私はあなたよりも不幸よ。」
というと、
「私よりも不幸な人がどこの世の中にいるのよ!」
と言いだすのです。もう付き合っていられません、放置です。
本物の幸せというものはお金で買えるものではないし、外見がいいから幸せだとは限らない、SNSを使って自分がどれだけ楽しい生活をしているかと自慢し合うのが幸せではない、と彼女を見ていて思います。人生は不公平なことだらけだけれど、今こうして息子と生きていられることに感謝しないといけないな、と同僚のウツ気味な愚痴を聞いて感じました。