亡くなる瞬間
15年ほど前に他界した祖父が亡くなる瞬間は、私は傍にいなかったため、人間が亡くなる瞬間というものを見たことがありませんでした。
眠らせる薬を入れてから、一体どれだけの時間があるのか分からず、医師に聞いてみたら、
人それぞれです。心臓の弱い方は数時間で亡くなってしまいますし、1日以上持つ方もいますので。
と。でも、いつ亡くなるかは本当に分からないので、というようなことを最後に言われました。この辺りは記憶が曖昧なのですが、私は夫に
呼吸が苦しいから眠らせる薬を入れるからね。だから安心して寝て良いんだよ。たくさん苦しんだから疲れたでしょう。ごめんね。ありがとう。
というようなことを言ったはずです。家族全員、ベッドサイドに集まって夫を見守っていましたが、ずっとコンスタントに呼吸をしていました。脈を取ってみてもまだ強くて元気な脈。私と夫の母以外は、代わる代わる仮眠を取って一晩を明かしました。翌日も同じように時間が過ぎていき、21時を過ぎた頃に
若くて心臓も強いからもっと持つのだろう。じゃあ、今日は少しまともに夕食でも食べようか。ピザの出前とか頼めるのかな?
と、ちょっとホッとした雰囲気でそれぞれが違うことを(ピザを選んだり、本当に注文できるのか看護士に確認したり、仮眠したり)し始めました。夫の右横には私。私より少し左後ろにいて、夫の弟の奥さんと話していた夫の母。
私はずっと色々と夫に話しかけていました。看護士からは耳が聞こえているかどうかは分からない、と言われましたが聞こえていると信じて。
すると、突然夫の呼吸が変わったのです。慌てて夫の母たちに伝えて、みんなを呼んで!と言うと二人はちょっとパニックに。
頑張ったね。逝って良いんだよ。ありがとう。
と祈っていたら、呼吸が浅く短くなって、胸が沈んだ後再び上がることはありませんでした。夫の横にいたのは私だけ。それまでみんな傍にいたのに。嘘でも強がりでもなく、
これで楽になれるね。良かった。ありがとう。
と、私は泣くことも無く、すごく穏やかな気持ちで夫を看取りました。
-
前の記事
フランスに残るわけ 2017.03.05
-
次の記事
目を背けたくなるもの 2017.03.07